ごちゃまぜ浮浪録

新人を脱しつつある肥満薬剤師が薬学部生向けに日頃のあれこれを偉そうに語るブログ

【薬】インパルス堤下さんの睡眠薬運転を振り返って+眠れない患者

大分時間が開いてしまった……。

 

最近は勉強会、講演と休日を潰すことも多く

 

会社の内規が変わって終業時間が伸びたので

 

 

ブログを書く時間も少なくなってしまった。

 

さて、本題は先日テレビを賑わせたインパルス堤下氏が意識もうろう状態で停車した車内で見つかったというちょっとした事件。

 

彼はレンドルミンブロチゾラム)、ベルソムラ(スボレキサント)、アレジオン(エピナスチン)を服用後運転し、こういった状態になったのだそう。

 

この件に関して、日経DIの記事になっていたり、各ブログを持っている薬剤師や医師がそれぞれ意思発信していたりして、結構語り尽くされているようだ。

もっぱら、薬には自信があるらしい某大規模掲示板の薬物乱用者共もスレが立って居た気がする。

 

 

別に彼は違法行為をしたわけではなく(処方せんに基づいて薬を貰っているし)、運転後体調不良を訴えて自力で停車したようなので、むしろ定石通りの対応をしたのだと思う。もっとも、唯一間違っていたのが服用方法なのだが……。

 

個人的な話をすれば、医師は初処方の薬に対して説明をしていたようだし、こうなってくると投薬した薬剤師が責められるのはややも仕方ない気がする。仮に説明をしてたとして、初めて睡眠導入剤を服用する患者に対してはそれなりにケアをしなければいけない。

 

尤も、彼は有名人だから、あまりプライベートな場に留まりたくなかったのかもしれないので、投薬を急かしてさっさと帰りたがった可能性もある。

もしくは、よく記事やニュースを見ていないので分からないが、処方箋をマネージャーが代理で持っていったとか? 

かかりつけ薬局でないのなら、本人が目の前に居たら提示した保険証からなんとなくインパルス堤下であることは察せそうだし。

 

 

薬の話に戻るとすると、3つの薬のうちアレジオンを除いて運転禁止薬に該当するといっても差支えないだろう。アレジオンは、せいぜい運転を控える…程度だろうか。

とはいえ、実際の投薬では運転手や、通勤に車やバイクを使用する患者なんてごまんといるので、

運転を控える薬(アレジオンや、タリオン、エバステル)などは、飲み始め注意をするよう指導しつつ、高速道路や長時間の運転等の付随する事故要件を回避するように言っている。

ちなみに、抗アレルギー薬の中でも運転に問題がない(眠気のスコア上昇がない)とされているのはいくつかあり、有名なのはアレグラ(フェキソフェナジン)

最近出て来たものでビラノア(ビラスチン)等がある。

 

 

そして、医師が言った通りベルソムラのTmaxは1時間前後なので、

おそらく意識混濁の主犯はブロチゾラムだろうなぁ、と。もちろん相互作用的な意味でベルソムラが働いてる可能性もあるだろうが…

 

いずれにしても、睡眠薬はどの種類であっても服用後は速やかに就寝するのが基本だ。

実際の投薬では、「服用したらすぐに就寝の準備に入ること」「早朝起床時のふらつきに十分注意すると共に、早朝の運転は控えること」を初処方時には徹底している。

 

それからもう一つ引っかかるのは、ややオーバードーズな気がしないでもないということか?

いくら不眠が強くてもいきなりベルソムラ20mgにブロチゾラムはやりすぎだと思うが…。睡眠薬が複数処方されるのって、心療内科に掛かるレベルの衰弱や抑うつがあって、痒みが主訴の不眠で出すには強すぎるような気がしないでもないが。

 

ひょっとすると、ブロチゾラムは処方される以前にも飲んだことがあって、不眠に使ったが効き目が薄かった等と説明したのかもしれない

 

 

睡眠薬と不眠の問題は、本当に切っても切れない関係だから悩みの多い社会なんだなぁと実感せざるを得ない。

 

 

ここからは話題切り替わって、不眠を訴える/および睡眠薬が合わないと感じる患者の話。

 

 

実際問題、睡眠導入剤がどれくらい処方されているのか?という話だが。

うちの処方だと、抗不安薬を含め睡眠導入剤が処方されている患者の割合は約2割くらいだ。

特に高齢者になるほど、一般処方に睡眠導入剤がくっついてくることが多く、

若い人で睡眠導入剤の処方箋を持ってくる人の多くは一時的または頓用でデパスマイスリーを使用する程度か、もしくは心療内科の処方だ。

 

そして、傾向として若い人~働いている人 では、寝つきの悪さの改善を求める人が多く、

処方のメインはマイスリーゾルピデム)またはルネスタエスゾピクロン)から始まり、レンドルミンブロチゾラム)へと経ていくことが多い。

概ね心療内科ではこれにデパスエチゾラム)が追加され、不眠というより昼夜逆転型の患者ではロゼレム(ラメルテオン)が入る。

ロヒプノールフルニトラゼパム)や、デジレルトラゾドン)が出る事はあまりない。

例外として、透析患者の若い人は、昼間数時間寝ている(透析中)ことが多いので、

これらの睡眠導入剤は良く出る。

ゾルピデム10mgを始め、ロヒプノール3mg、ソラナックスアルプラゾラム)までMaxで出ることもある。

 

一方、高齢者になると睡眠のリズムが崩れている上に、75歳以上で一日家に居ることが増えて来た患者ほど、寝るのが早く早朝覚醒と夜間頻尿のコンボで朝までの熟睡を望む人が多い。

そのため、ゾルピデムよりもロヒプノールの率が高くなってくるし、

本当はダメなのだがうちの医師は頻繁に高齢者にレンドルミン0.5mg(0.25mg2錠)で出している。

(※添付文書上、ブロチゾラム不眠症には0.25mgが適応)

 

そこへ割って入ってきたのがベルソムラ(スボレキサント)だ。

睡眠導入剤の中では最も新しく、かつ従来のベンゾジアゼピン系とも異なる、オレキシン受容体拮抗薬。

最近医師の間で広まりを見せているのか、内科でもよく使われている。睡眠導入剤の中で、向精神薬指定を受けていない(ルネスタ、ロゼレム、ベルソムラ)せいもあるか。

ベンゾジアゼピンのように耐性を生じないとされているから、

今までデパスレンドルミンを処方してきた患者に対して、あの薬はクセになるからこっちに変えよう、と強引に切り替える医師が近しく居て、それはどうなんだ、と思わないでもない。

 

ちなみに半減期は10時間だが、概ね一般的な生活をしている人だと睡眠感は7時間程度のようだ。Tmaxの通り、立ち上がりは良くないので寝つきよりも、先述した高齢者向きとも言える。

 

ただ、このベルソムラ、添付文書とはややギャップの多い結果となっているようだ。

患者によっては全く著効しなかったり、逆に12時間以上睡眠してしまう患者が少なく無かったり、ブレ幅が大きい。BZDから切り替え後、ベルソムラが合わずにすぐ中止になる患者の割合は2割では済まないような感じだ。

 

というのも、ベルソムラはオレキシン受容体競合拮抗薬であり、

そもそも論としてオレキシンの生体内濃度に影響を受ける、ということだ

 

いや、それならBZDだって同じような感じじゃん。GABAの生体内濃度次第だし

(BZD系薬→GABA-A受容体→Cl-チャネル開口→過分極(Na+チャネルによる脱分極と中和)→覚醒の鎮静)

 

と言われるかもしれないが、要はこの覚醒のシステムにおいてオレキシンが生体の日内リズムに色濃く依存する所が違う所なのだ

 

オレキシンは生体が「朝起きて、夜眠る」ためのシステムの根幹であるから、

例えば眠る時にカーテンを閉め電気を消す、

太陽の光で目を覚ます

そういう普段の人間のリズムを疑似的に脳内で作り出している物質になる

 

そして、スボレキサントは「競合拮抗」

つまりオレキシンが生体内に多ければスボレキサントの濃度が一定(服用として20mgまで)と決められているのなら意味をなさず

逆にオレキシンが欠乏した状態だと非常に眠気が続いてしまう

 

そういうわけだ

つまり患者の生活リズムによって効果がブレてしまうので個人差は出やすいし、

 

さらに言うと

起床後も暗い部屋で日光を浴びずに部屋に1日居るような状態の患者

うつ病治療中や、社会的不安から昼夜逆転によりホルモンバランスが大きく崩れている患者

 

では、眠気状態が長く続いたり、全く寝付けなかったりする

 

ともいえる

そして、CYP3A4により代謝されるので、ここでも強く個人差が出る

 

 

俺の私的な評価からすると使いづらい薬かもしれないなぁ

 

と思っている。

 

 

動物に睡眠は必須だが、

 

どうも睡眠に悩み多き日本人は多く居るなぁ、と思っている昨今だった。

 

 

 

蛇足になってしまったがとりあえず国試向けに数点。

スボレキサントはCYP3A4を強く阻害する薬と併用禁忌。

アゾール系であるボリコナゾール、イトラコナゾールはもとより、リトナビルやインジナビルなどの抗ウイルス薬、そして抗菌薬であるクラリスロマイシン

 

それ以外の、ジルチアゼム等の併用注意薬が出た際、高齢者に20mgが出ている例などでは減量を提案する。

 

睡眠導入剤は選択肢が充実しているので、大体毎年薬理か生物か実務を絡めて出題されるイメージ。差別化が分かりやすくて、得点しやすいので取りこぼしが無いようにしたい。

 

スボレキサント→オレキシン(覚醒ホルモン)受容体アンタゴニスト

ラメルテオン→メラトニン(睡眠リズムホルモン。なおMT1は入眠、MT2は日内リズムを担当する)受容体アゴニスト

ベンゾジアゼピン→GABA-A受容体のBZD部位に結合する。

ベンゾジアゼピン系(ゾピクロンなど)→ベンゾジアゼピン受容体のうち睡眠作用を担当するω1受容体に選択的に作用する(ω2…筋弛緩作用)

 

それから、多くのBZD系薬は30日制限だが、ベルソムラやロゼレム、エスゾピクロンには今の所(2017年6月現在)、制限がない(ゾピクロンは30日制限。)

 

 

第102回薬剤師国家試験が終わったようで+ 【日薬】甲状腺機能低下症への指導

今年も国試が終わったみたいだな。

 

 

直後の下馬評では、

 

第100回よりは取りやすく、第101回よりは取りにくい

 

という話を聞いた。

 

去年ギリギリ落ちた俺の同じ研究室だった友人も

 

今年は5%ほど得点率を上げて合格点に達したようだ

 

尤も彼はMRとして就職したので

 

勉強する時間は予備校の浪人生と比べると少なかっただろうけど

 

それでも、その得点率を聞いた感想は「必死に1年浪人して頑張ってもそれくらいしか上がらないんだな」と

 

思った

 

現役中に講義に来る予備校の講師の話をほとんど聞いてなかった俺だが

 

「現役が一番伸びる、浪人生は最初は点数高い状態だが、秋過ぎから現役に抜かれていく(模試)」

 

という話をよく覚えている

 

実際俺は10月に受けた最初の模試で171点、

 

最終的な本番の試験では280点

 

5か月で110点伸びたわけだけど

 

学校という環境の中で、6年間に染み付いた学力は意外と否定できない

 

その環境から外れた浪人生は、全部自分でなんとかしないといけないわけだし、厳しい戦いを強いられる1年になるんだな

 

 

実際、統計でも現役の合格率の方が浪人生よりも圧倒的に高い

 

現役が一番チャンスがあるのは数字が示している

 

 

後、国試の合否で一つ興味深いのは

 

大学の卒業試験との相関

 

私立の薬学部なんかは合格率でモロに人気が左右されることが分かっているから

 

明らかに不合格の点数しか取れない生徒は卒業試験で落とすことになる

 

特にボーダー間際の人間は必死に卒業試験を乗り越えようとするのだが

 

 

うちの大学では本試・再試共に合格点(65%)に達せず、かつ合計点が全体の下位20%の奴を不合格として、

 

その中で卒業認定するかどうかを教授会で判断するらしかった

 

そして、第101回の薬剤師国家試験の現役合格率は86%であり、

 

この下20%を落とす、という目論見は

 

概ね当たっていることが分かる

 

卒業試験で涙をのんでいた同研究室生も数人知っているが

 

 

今更ながら振り返ってみると、

 

彼らは卒業できていても合格するのはかなり難しかったのではないか

 

と思う

 

 

 

要するに現役で頑張れない奴にはもう難しい時代になってきているんだろうな

 

 

 

 

 

 

と、話は変わって

 

日常の投薬から記事のネタにする時間だ

 

 

今日は甲状腺機能低下症について

 

甲状腺機能低下症の原因は様々なものがあり、

老化や遺伝、自己免疫性、それから外科的に甲状腺腫等で摘出したり、放射線治療を行った後に見られる。

が、原因の多くは橋本病(≒慢性甲状腺炎)である。

橋本病の男女比は1:20以上で圧倒的に女性に多く、20代後半から40代に好発する。

 

甲状腺は人間の代謝等に係るため、

 

機能が亢進すると、体温上昇・体重減少

機能が低下すると、高脂血症などに陥りやすくなる。

 

実際、レボチロキシン(チラージン)を服用している患者がスタチンを服用するようになることは多い

 

治療法としても、ホルモン補充療法が一般的だ

 

で、レボチロキシン自体は甲状腺ホルモンとして働くため、そのままホルモンを補う形で作用する。

 

ちなみに、甲状腺ホルモン(T3-トリヨードチロニン・T4-チロキシン)

もまた、国試でよく頻出のものである

 

生物と薬理が複合しやすいため、1日目2日目共に狙って出されることが多い

 

なお、生体内での活性はT3>>T4であり、T3の多くは末梢でT4から合成される。

なので、製剤としてもT3ではなくT4をよく使う。

T3では強すぎるためだ。(一応T3製剤も存在するが、長期投与には向かない。どちらかというと緊急性の高い場面で使用されるようだ)

 

TSHによって合成が調節され、TSHは負のフィードバックを受ける。

そのため、異所性の腫瘍や、甲状腺腫によって、甲状腺ホルモンに関わる病態は異なるので

それぞれTSHとT3/T4がどう高値/低値を示すのかも覚えておく必要がある。

 

甲状腺ホルモンを増やす形になるので、心疾患の患者や、高値高血圧の患者には慎重投与となるが、

基本的に長期安定した患者にはあまり服薬的アセスメントが低い部類になる。

 

一応気を付けるべきは、吸着薬のコレスチラミンや、透析で使用するホスレノール・フォスブロックといったもので、

あとはワーファリンくらいか。

 

なので、チラーヂン単独使用の患者には、副作用が出ていないかのチェックと併用薬のチェックが基本……

 

と思っていたのだ。俺は。

 

 

ところが昨日、半年ほどチラーヂンを服用している患者から質問をされた。

甲状腺の病気って、海藻絶対食べたらダメって、友達から聞いたんだけど、私わかめの味噌汁大好きなのよねー、食べちゃダメかしら?」

 

 

うっ。確かに海藻類にはヨウ素が比較的多く含まれるため、甲状腺への影響が深い食品である。しかし甲状腺機能低下ということは、ヨウ素による亢進はむしろプラスなのか?チラーヂンの用量にも関わると思うが…(脳内の葛藤)

 

こういった生活指導や食品との兼ね合いは、高齢になればなるほど、医師には相談しにくいそうで、先生には言ってないんだけど……と前置かれる人が多い。

 

そもそも一重に甲状腺機能低下といっても、医師がどういう基準でチラーヂンを出しているのか薬剤師には分からない。だから断言はできなくて、(医師に聞いた方がマストなのだろうが、多忙の医師にこんなことを電話で聞こうものなら罵倒されて終了である)次回診察時に医師との相談を勧めるのが手一杯だったりする。

仮に適当なことを断言して見当違いの疾患だった場合

 

 

アッー

 

 

なことになるのは俺である。

 

ということで無知を猛省して勉強することにした。

 

 

甲状腺機能亢進症の患者では、ヨウ素を多く含む海藻類は控えるのが確実である。理由は言わずもがな…

 

甲状腺機能低下症で、薬物療法を行っていなければ、ヨウ素の補充に海藻を摂取するのは勧められる。

ただし、ヨウ素を摂取しすぎると甲状腺の機能をさらに低下させることに繋がるため、大量の摂取は禁物である。

 

では、実際にどこまでがOKなのか。

 

アメリカでは、ヨウ素の耐用上限量を1.1mg/dayとしている。(成人)

 

多くの諸外国も、これに倣って、概ね1mg/dayとするようになっている。

国によってはヨウ素は体に害なため、食品規制もされている。

そのため、ヨウ素欠乏から、食品添加物サプリメントヨウ素が存在するほどである。

 

ちなみに、食品添加物としてヨウ素を添加することは日本では認められていないため、これらを使用した食材は日本には輸入できない。

 

ただし、日本においてはこれらとは真逆であり、

日本成人のヨウ素摂取量は3mg程度と試算されている。(1mgという結果もある。)

また、日本人には遺伝特異的に、ヨウ素への耐性が高く、諸外国を大きく超える量を摂取しても甲状腺腫に掛からない、とされている。

 

まあ、昔から味噌汁にワカメ、昆布出汁を摂取してきた人種だから、なのだろうか

 

2010年の厚生労働省食事摂取基準によれば、耐用上限量は2.2mg/day とされているので、この記事ではそれを基準に計算することにする。

 

ヨウ素の多い食品・食べ物と含有量一覧

 

これを見ても、海藻類のヨウ素の多さは圧倒的である。

 

食べる量を考えても、海藻だけに絞って考えた方がよさそうだ。

 

まこんぶ(素干) 240000μg 生わかめ 1600μg
ほしひじき 47000μg ほしのり 1400μg
こんぶの佃煮 11000μg めかぶわかめ(生) 390μg
あおのり 2800μg ところてん 240μg
焼きのり 2100μg    

 

 

これはさっきのページからそのまま引用したものだが、含有量はug/100gである。

分かりづらいので、mg換算すると、

こんぶ100gに240mg

ひじき100gに47mg

のり100gに2.8mg

わかめ100gで1.6mg

めかぶ100gで0.4mg

 

といったところになる。

これから換算すると、まず健常成人であっても、こんぶは1日1gでも毎日摂ると摂りすぎである。ひじきだと毎日なら5gでキツい。

 

甲状腺に影響を与えると考えれば、この二つはさすがに避けた方がいいと指導するのが無難か。

のりは100gもバリバリモシャモシャ食う奴なんていないだろうから、5gで換算すると0.14mg。

わかめは味噌汁に入れたら20gは食うだろうか?それなら0.32mg。

めかぶや、それ以外は考慮しなくて良さそうだ。

 

 

少なくとも、健常成人であれば、わかめの味噌汁や、ご飯と一緒に食べる程度の海苔なら、毎日3食摂取しても問題なさそうではある。

 

ただ、甲状腺機能低下症の患者を考えると、毎日OKというのは言いすぎか。

しかし、こんぶとひじきさえ避けてもらえれば、たまに食べる分には影響も少ないだろう。

 

後は、定期的に血液検査を受けてもらい、高値を示すようなら控えてもらう……感じで良いのではないだろうか。

 

こんぶの場合は、出汁に使用してもヨウ素が出汁に出るそうなので、スープの出汁にはかつおぶしか、いりこ辺りで我慢してもらうことにしよう。

財布を落とした。

クソが。





寝坊して地下鉄にダッシュした挙げ句財布を落として電車に乗れず就職以来初の遅刻をかました…。


俺の1380円…





そんなことはさておき、第102回の国試もいよいよ来週らしい。



とりわけ、今年は3代目JSBと九大の二次試験と薬剤師国試が重なって福岡市のホテル状況は大変らしい。



まぁ、九大はともかく薬剤師国試の日程はだいぶ早くに出るから、


薬剤師国家試験の受験生がホテルで困ることは無いと思うんだが




ちなみに俺は9月くらいには予約してたと思う



この時点では会場は発表されてないが、



福岡は毎年第一薬科大で行われるから



とりあえず博多駅周辺に取っておけば問題ないだろう



最近のインターネット予約は前々日までならキャンセル料0な所が多いから




前もって確保しておけば良いと思う




俺の場合は
受験前々日チェックイン(からの、当日どれくらいの時間と混雑で行けるかのチェック、帰宅後勉強)

前日は、過去問を使って、実際の受験時間に合わせて行動

当日は6時には起床し、7時半までには食事を済ませる


薬剤師国家試験は、2日ともに3時限で6時間を超える長丁場


最初の必須問題からフルチャージで行きつつ、



エネルギー切れしないようにしなくてはいけない


昼食のおすすめは、小分けできるパンやおにぎり、あとは食欲が出ないとき用のエネルギードリンクやゼリー剤。



模試でこの辺はできてるかもしれないが



昼飯ガッツリシステムはやめたほうがいい



眠くなるし、午後が辛いし、トイレに行きたくなったら、集中力も切れて最悪だ



特に、第102回薬剤師国家試験で、第一薬科大で受験する女子に注意なのだが



あそこはトイレの利便性がめちゃくちゃ悪い



その上に狭く、数も少ない



なのに受験生は割と多い




体験談なのだが、休憩時間の終わりの方になっても女子トイレの前には列が出来ていて、



試験中に何人も離脱していたのを覚えている



緊張や冷えで急にお腹に来ることもあるだろう



できることなら、この対策はやっておいた方がいいな




まぁあれだ、人間やってきたことしか出せない



それが出せるか出せないかは性格じゃなくて作戦、準備…。




あと最後までもがくのは重要



特に、簡単な問題ほどケアレスミスは起こりやすい




あと、同じ大学や友達で群れなくていい



俺は関西の大学から九州会場を選んだので


孤独な受験をしたが



本番くらい、それでいいと思う



おかげで集中力を2日間保って最高の結果が出せた




休憩時間に携帯触る時間があったら



プリント眺めてたほうがいいぞ




お前のしゃべってる目の前の友達は300点余裕で取れる自信からそうしてるのかもしれないし




自分自身が何をどう転んでも落ちる気がしないなら勝手にすれば良いと思うが…。




(といいつつ、現役時代は1日目の出来があまりにも良すぎてホテルで1日目の自己採点でドヤ顔インターネッツしていた俺であった)



あ、ちなみに1日目終わった後に、知識のうろ覚えで分からなかった問題を復習する意義は強いと思う。
案外範囲って被るし、それで切れる選択肢もあるからな。


1日目分からなくて2日目も同じミスして落ちたりしたら目も当てられないだろ。

【薬】たかがメチコバール、されどメチコバール

よう、投薬中にネタになりそうなことを備忘録的に記事にすることを覚えた俺だ。

 

 

40代、女性。既往歴は無し。服用中の薬は点眼のみ。

 

主訴、足のしびれ。

処方

メチコバール 3錠 毎食後 14日分

 

メチコバール(メコバラミン)は、ビタミンB12製剤だ。

 

薬剤師国家試験でもよく頻出する。

胃の全摘などで、内因子が欠乏すると、食物中のビタミンB12の吸収不全が起きて、悪性貧血(≒巨赤芽球性貧血)を起こす だったり、

ビタミンB12の構造(その構造式の通り、コバルトCoを含む) ことだったり、

 

後は細かい所で言えば腸内細菌が合成するものだったり(葉酸パントテン酸、ビタミンK、ビオチン、ビタミンB2、B6、B12)

 

その適応は、末梢神経障害。平たく言えば、手や足の末端におけるしびれ、痛み、発赤などだ。

 

副作用が少なく、作用も強くなく、簡易に処方されるため割とよく処方される。

使用にあたっては、初回2週間で効果判定をし、効果が見られない場合は漫然と処方をしないこと(類:リマプロストアルファデクス、アリナミンなどのビタミン類)……と記載はされているが多くの医師はお構いなしに90日分どっさりと出していたりする

 

例えば、交通事故のむち打ちなどで、慢性的にしびれが生じている…だとか、

原因は分からないがずっとしびれがある、とか。

あとは糖尿病性の末梢神経障害の補助的療法で使われていたり。長期処方はこの理由が一番多いだろうか

 

で、上記の患者は既往歴もなく事故でもなかったので、特に理由も分からないがしびれているので出された、と俺は判断した。

患者の容体も悪そうではなかった。

ただ、いくつかの受け答えをしていると、唐突に、

「へえ~これビタミンB12なの。確かに最近取れてない気がするわ~、ビタミンB12が多く含まれる食品って何があるんですか?」

 

ヒェッ。

 

栄養学もちょこちょこ単位で取っていたから、その辺もカバーはしていたが、ビタミンB12で限定されると知識不足が露呈した。

そもそも、腸内細菌が合成するのだから、胃の機能が正常なら基本的に枯渇することは無いと思われる……のだが。

 

答えに窮して魚介類と、海藻類、あと肉類となんとも漠然とした回答になってしまって、今こうして調べてみた。

 

ビタミンB12を多く含む食品類

・青魚(イワシ、サンマなど)

・海苔(他の海藻類はあまり多くない。精々わかめ程度。ひじきやもずくは×)

・貝類(比較的どの種でも多いようだ。ハマグリやあさり、しじみでもOK)

・レバー(肉類でもそれなりに多く含まれるが、肝はダントツ。ただし痛風のリスクを上げることを考えたら、適度な量に限られそう)

 

ちなみに、野菜類は意外にも? 含まれないものが多い。

そういやどこかの模試か卒試か国家試験か忘れたが、ビタミンB12をほとんど含まない食品を選びなさいとかいう問題で緑黄色野菜って選択肢があった……。

 

だから極端に言えば、菜色主義者はビタミンB12が欠乏しやすくなっているということだ。

 

 

 

とまぁ、唐突にこんな記事を書いてみた。

日が経つと忘れるから、案外その日の投薬や疑義照会をネタにするのは良いかもしれない。

 

さてしかし第102回国家試験ももうすぐか。

マジで今解いたら物理化学が壊滅的になる気しかしないぜ

肝性脳症の新薬リフキシマ

新年が気付けば明けてしまった。

 

 

さすがにこんな更新ペースではマズいと思うのだが…

 

今の所、フルで勤務を回っている関係で休みが体を休める日になってしまって

休日の勉強もはかどらない……。

 

ともあれ、仕事中にネタを見つけたので、薬剤師国家試験も間近に迫っていることだし、久々の記事は新薬の記事だ。

 

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201612/549324.html

 

薬剤師国家試験の勉強をしている時に、結構な頻度で過去問に目にしたと記憶しているのだが、

 

高度肝障害(主にアルコール性慢性脂肪肝や肝硬変。一部、慢性肝炎)→高アンモニア血症→肝性脳症

 

という繋がりは頭の中でイメージできるだろうか。

 

肝障害が高度あるいは慢性に進行した例では肝機能が低下しており、

特に肝臓の主たる仕事である体内で生成した毒物の解毒機能が顕著に悪くなる。

 

その一例がアンモニアであり、長期に肝硬変を患う患者は往々にして高アンモニア血症を発症する。

 

そして、肝硬変での治療薬の代表として、

・BCAA製剤(バリン・ロイシンイソロイシン)……リーバクト、アミノレバン等

→肝性脳症を引き起こす患者は、これらBCAAが低下している(フィッシャー比)。これらは肝臓ではなく筋肉でも代謝できるため、増悪期の精神症状等を改善するためにもつかわれる。

・ラクツロース

腸内で乳酸菌を増やし、腸内のウレアーゼ活性でアンモニアが増加するのを抑制する。

・カナマイシン

腸管からほとんど吸収されない抗生物質(アミノグリコシド)。

上記の腸内細菌を殺菌することで、アンモニアの増加を抑制する。

副作用として、腸内細菌叢が乱れ偽膜性大腸炎を引き起こす。(腸管で吸収されにくい感染性腸炎治療抗生剤は、どうしても付きまとう副作用である)

※ただし、カナマイシンには肝性脳症の適応は無い。適応としては、感染性腸炎である

 

これらが挙げられる。

マークシート型の国家試験では特に出題しやすいので、必ず取りこぼしが無いようにしておきたい所だ。

 

このカナマイシンに似た作用機序で、リフキシマは肝性脳症の適応で発売された。一般名はリファキシミンで、系統としてはリファンピシンと似ているDNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬である。

 

リフキシマのメリットは、肝性脳症に悩む肝硬変患者(ちなみに、肝硬変では肝性脳症の比率は4割以上に上り、非常に予後が悪い)に対する新しいアクセス方法だということ。

 

これは国家試験には全然関係のないことなのだが、上記のラクツロースやアミノレバンといったものは、通常の栄養に置き換えて使用するものなので、とにかく量が多い。

この間の記事で言った、カリウム吸着薬のカリメートも大概なのだが(1包5グラム。それを毎食毎日)、アミノレバンは1回50gである。それを180mlの水に溶かして毎日毎食飲まなくてはいけない。

ラクツロースは1回30~60mlほど(ゼリー剤ならアーガメイトゼリー並の大きさ)だ。

一般的な製剤と比べると量が多く、治癒しない限り一生飲むものだから、嫌になるのもしかたがない。

 

あと、アミノレバンはくっそマズイ。

薬局実習でもし試食させてもらえるなら是非飲んでほしい。

3日でギブアップしたくなるぞ。

 

これに加えて、併発する疾患が肝硬変には多いから、とにかく大量の服用をしなくてはいけない精神的苦痛から、コンプライアンスが悪化しやすい疾患だ。

 

そんなんだから、服薬しなくなる患者が多く、見かねたうちの医師もついこの間でたばかりの新薬に頼っていきなり処方してきたというわけだ。

(ちなみにコレ、いま規制品らしく、メーカーが処方元に確認して契約を結ばなければ納品できないみたいだ。)

 

こういう肝硬変患者のコンプライアンスを改善できるのでは…と思っている。

 

デメリットは、結核菌への交差耐性が問題視されているということ。

要は、結核治療薬であるリファンピシンと同様の機序であるので、リファンピシンに対する耐性菌を増加させてしまうのでは、という懸念からだ。

 

というのもあって、添付文書では禁忌ではないものの結核患者には第一選択とせず、他の療法を優先すること、となっている。

 

リフキシマについて抑えるべき点はこんな所だろうか?

 

昨年の新薬なので、国家試験で出るにしても2018年か2019年以降だと思うが

今4年生なら、チェックしておいても良い所かな

 

 

ところで、今年のホットな部分だが

 

1瓶130万、一人の患者の治療3か月に400万のお薬ハーボニー配合

(新薬のC型肝炎治療薬レジパスビル・ソホスブビルの合剤。ソホスブビルはNS5Bポリメラーゼ阻害で、日本人のC型肝炎に特に著効率が高いらしい新成分)

 

のニセモノが出回ってるらしいな。

B/C型肝炎治療関連の問題は今まで併用薬関連と禁忌くらいしか出しどころが無かったし、

そろそろ狙われる可能性もあるんじゃないかな~と

 

思ってる。今年は無いかもしれんが、来年の国家試験はちょっとあるかも。アスナプレビルなんかもあるしな。

 

 

 尤も受験生はこの時期こんなブログなんて開いてないとは思うが

 

 

どうでもいいことだけれど

調剤薬剤師になって、

物理化学衛生分野に関しては

 

本当に知識使わないんだよな。マジで

基礎部分だから仕方ないとはいえ

なんであんなに物理化学って青本もブ厚くてそこそこ出題範囲あるんだろうな…

第99回、第100回に至っては

アレの足切りで涙した人も居るだろうに

 

逆に

薬理 薬物動態は

使えないとお話にならないレベル

 

ってくらいに毎日割と使う

当たり前ちゃ当たり前だが

 

患者の前でニコニコ笑って袋詰めする

なんてコンビニ店員でもできるわけで

 

それをやりつつも頭の中で電子カルテ見ながら患者の動向を推察する

んで、必要そうな知識を使っていく…

 

 

知識が無くても仕事にはなるのかもしれないが

あって得することは多いと思う。

 

例えばさ、

血圧と糖尿病の薬をずっと28日とかで同じ薬処方されてた患者がいきなり

全処方を14日分、ただしメトグルコ(メトホルミン-ビグアナイド薬)錠だけ11日分で処方されてて

 

普通、処方せんで日数が違うのはいくつか理由があって

①単に医師の処方ミス。電子オーダリングで、前回の日数をそのまま引っ張ってくると時々ミスる。

残薬調整。患者がこの薬だけ●日分余ってる、と医師に伝えてその分減らしてるパターン。

等色々あったりするんだけど

まぁ疑義照会するか、患者に聞いて解決するのであれば良いが

 

この時処方せん持ってきてたのが患者の妻で、代理だったから何も聞いてなかったんだよね。奥さんは

 

で、何も知識が無いと、看護師かクラークに電話して日数ミスってますよ~って依頼しちゃう可能性があるわけだけど

 

よくよく尋ねたら、2週間後にCTを受けるとのことだった。

 

ああ、あれか、とそれでピンときた。

メトグルコは重大な副作用に乳酸アシドーシスがあるんだが

これを起こしやすくする要因に腎機能低下があるんだな。

だから透析患者や末期腎不全では当然禁忌なんだけど

 

CTなんかに使うヨード系の造影剤は、一時的に腎機能を低下させることがある。

特に、こういうCTを受ける患者は元々腎機能が低下しつつある高齢者が割と多いから

結構気を使わないといけない。

 

それで、CTの前後、メトグルコだけを中止する意図が医師にあったわけだ

実際に服薬指導する時にも、CTの2日前から中止し、CT後48時間は服用を避けるのが望ましい。

とされている。

 

 

こういう所に大学で勉強した事が生きてくるなら

 

まああながちしんどい思いして勉強したことも悪くなかったと思うようになってきた(最近)

 

あと単純に雑学的にでも色々知ってると

患者と話が弾むし良い。

話が弾まないつまらない薬剤師に

 

自分の内情なんて話してくんないだろうからな~

 

俺なら

薬の説明と袋詰めしかしてくれない奴より

多少なりとも聞いてくれる奴の方がいいな

 

 

さういふものに わたしはなりたい

【薬】トラムセット

随分とご無沙汰になってしまった。




忙しい上に、風邪で今年はじめて寝込んでしまった。


まあ、学生時代はしよっちゅう体調不良で欠席をしてた俺だから、


新卒8ヶ月無遅刻無欠勤なのは快挙とも言っていい



今日も偶然休みの日だったから、欠勤にはなってないしな。




ところで、近況だが。


11月13日に、福岡マラソン2016が行われた。



このブログの命題のひとつ、走るということ




当然、フルマラソンだったわけだが、



道中折り返しで脚が吊り、その後すぐに両足が吊ってまともに走れなくなるアクシデントこそあったが、


4時間27分で完走できた。



目標は3時間台だったのだが、まあしかたない



芍薬甘草湯でも用意していけばよかったぜ




まぁともあれ、今後もマラソンには挑戦していきたい



その前にしっかり痩せることだろうけど。





んで、最近あったこと。



病院薬剤師であれば、患者の腎機能をチェックして投薬することは当たり前になっている。


特に、透析科のある病院ならなおさらだ




薬学部ではほとんどやらなかった気もするが、




腎機能による用量調節は高齢化の進んだ今、必須項目でもある。



肝機能は基本的に病名として肝臓病とつくものなら



禁忌になる、あるいは慎重投与がほとんどなのだが




腎機能の場合は細かく数値と状態によって行えることが違ってくるので



医師も薬剤師も神経を使わねばいけない部類だ



もっとも、薬局薬剤師のほとんどは



患者の腎機能データを得ることは難しいし、
よほどのことでなければあまり腎機能をもとに疑義照会をすることはない



が、今回偶然にも、うちの門前で透析を受けている患者が、外来で処方をもらいにきたため、そのケースがあった。




例1 透析患者への痛み止め

透析患者さんAさんは、事故による追突で頸部の痛みを訴えて受診した。

Aさんは透析を週に3回受けており、腎機能はccr10未満、定期処方での痛み止めは出ていないものとする。

処方はこちら


ワントラム錠 100mg 1錠 朝食後
ナウゼリンOD錠 10mg 1錠 朝食後
10日分


透析を受けている病院と同じ病院にかかっているため、カルテで医師は透析しているということを分かっているはずなのだが、よほど強い痛みがあったのだろう、ワントラム(徐放性トラマドール)を処方した。

ちなみに、鎮痛剤の第一選択はNSAIDSと呼ばれる
ロキソニン(ロキソプロフェン)やセレコックス(セレコキシブ)だが(基本的に外傷疼痛であればセレコックスが選択されやすい)


慢性疼痛、長期的に使用されるものとなるとこのトラマドールが選択肢に入ることになる。
トラマドールとアセトアミノフェンを配合した、トラムセットも汎用されている。

神経障害性であればリリカ(プレガバリン)や、サインバルタ(デュロキセチン-SNRI)にも手が及ぶ。


一般に、NSAIDSよりもトラマドールの沈痛作用は強い。
ガン性疼痛にも用いる、オピオイド型の沈痛剤だからだ。


故に副作用も強い。
それに、沈痛剤の大半は腎代謝型であるため、(特にNSAIDS)
腎不全患者への痛み止めは、本来慎重にならざるをえない、のだが…



当然ながらこれは疑義照会の対象となった。

そもそも添付文書がワントラムの重症腎不全患者への投与を禁忌としているのだが…


電話で聞くと、透析患者≒重症腎不全患者という考えではなかったようで、やや喧嘩腰に反論されてしまった。


もっとも、腎不全患者には禁忌でも、透析または無尿患者には禁忌でない、というものが存在するから、この医師の考えは間違いではないのだ

腎不全患者への投与が禁忌の理由として、代謝が遅延した結果、さらなる腎機能の悪化を招くから、というのがその理由だ。

透析している以上、腎代謝機能を透析機器に依存しているのだから、そもそもこれ以上悪化しようがないのだ

例として、NSAIDSがこれに当たりやすい


代謝の遅延したNSAIDSは腎機能を悪化させるが、透析患者においては用量調節をそれほど必要とされない。


ただ、トラマドールは話が異なる。
包合され、腸管循環する特性を持つため、透析患者においても用量調節を必要とする薬剤なのだ


そして、ワントラムは徐放性。

トラマドールの普通薬であるトラマールは、投与間隔をあけることができるがワントラムはそれが不可。

だから禁忌になっている。


という旨を説明したら、
じゃあ、トラマールで出すわ。


と、丸く?収まった。


ちなみにトラマールでも、用量調節をしないといけない。




で、これが話題になった翌週、今度は透析科でトラムセットが処方された。


添付文書上では禁忌となっているが、実は過去にも処方歴があったため、医師に問い合わせる前にメーカーに問い合わせた。


するとやはり、透析でトラムセットを使うのは割と普通なそうで、CKDガイドラインによると、用量調節をして用いるとのことだ。

ただ、欧米ではccr10未満の患者には推奨されないとなっているため、


完全に医師の考え任せに近い。


なので、どうしても出す場合は、健常人の25%まで。

トラムセットは8錠がMAXなので、


透析患者には2錠、それも朝夕分2で、ということだ


改めて患者の処方を見たらなるほど、1錠分1だった。



うちの門前の医師は正直かなり疑義照会をする頻度が高いので、いちいち疑わなければならないが、
この透析科の先生は非常に用量調節には厳しく見ているので、こちらが後から納得することが多い。




何にせよ良い勉強になった。

ちなみにトラマドールもNSAIDSも透析では除去できないので


投与してしまって毒性が出てからでは遅いんだよね。



たぶん、薬剤師国家試験においては


毒性・解毒法の分野で問われることがあるかもしれない透析性。


薬物の中には透析で除去できるものとできないものがあり、除去できる毒物は透析で除去することがある。


ちなみに透析性に関わる要素として
分子量
たんぱく質結合率
分布容積

などがあり、

賢い薬学生なら

どれがどうなると透析されやすいのか、


分かるよな。



たんぱく質結合率が高いと、透析は血液を機器に通して回すわけだから、たんぱく質に結合した薬剤までは完全に除去できない。

分布容積が大きいと、薬物は血漿より組織に移行しているため、除去率が下がってしまう。

ちなみに脂溶性が高いほど分布容積は大きくなりやすい性質を持つ。


何が分布容積が大きいか、小さいか。
代表的な薬物がここで浮かばなかった奴は今すぐこんなブログ閉じて勉強するんだ

【薬】チラーヂン。

めっちゃ寒くなってきた……。

 

 

この間までは暑い暑い言いながら通勤してたっていうのに

 

 

よう、俺だ。

 

 

特に何か目的があったわけじゃないが

 

日常的にまとめておきたいことができた時にはブログってのは便利だな。

 

 

うちをかかりつけ薬局にしてるとある患者さんA。

 

60代の、女性だ。基礎疾患はそこまで多くない

 

恒常的に飲んでいるのもGERD予防のPPIと痛み止めだ。

 

今回の処方には、マグミット(水酸化マグネシウム。汎用される下剤だ)が追加されていたので、便通が悪いのかな~と思いながら服薬指導をした。

 

お薬手帳には、先月から他の病院でチラーヂン(レボチロキシン)50μgが処方されている。

他のページを見ても載っていないので、恐らく初処方なのだと思われた。

 

なので、飲み合わせのイメージギャップも埋めるため、それとなく聞いてみたら、

案の定甲状腺腫による摘出術を受けており、チラーヂンを飲まなくてはいけなくなったようだ。

 

だが、今処方されているものに特に相互作用的な問題は無さそうだったので、便通の調整に気を付けつつ、とだけしか言わなかった。

 

 

ところがどっこい。

患者さんが「この便秘薬はね~、朝晩で出てるけど昼晩にしようと思うの。朝は甲状腺のコレ(チラーヂン)があるから~」

 

と言う。

詳しく聞けば、どうやら他の薬局で、チラーヂンと同じタイミングでマグミットを飲まないようにと言われたようなのである。

 

かなり真剣に考えているようだったので、はて…と添付文書を確認してみる。

 

レボチロキシンの作用に影響を与える大きな薬剤のひとつは、金属イオンとキレートするということである。

 

主に、沈降炭酸カルシウムや、水酸化アルミニウムなどの制酸剤。

あとは、鉄剤だ。

亜鉛も注意が必要。亜鉛というとサプリメントを思い浮かべるが、ポラプレジンク(プロマック)も亜鉛を含んでいるため、注意が必要だ

 

だが、Mgは調べてみたがレボチロキシンに対しての吸着能がほとんどないそう。

同じ2価のCaイオンは吸着するので、科学的にちょっと理由が分からずお手上げであるが、

汎用されているMg製剤(しかも1回量0.5gとかとんでもない量)を併用しても記載されないくらい影響がないようだから、

 

これはさすがにやっかみもんな投薬をしたのかなあ、と思わんでもない。

 

もしくは、金属の含まれる薬とは間隔をあけてくださいね、とだけ言われたのかも。ご高齢だから、いちいちカルシウムがうんたらというよりは分かりやすい。

マグミットと聞いてそう反応したのだから、ほぼ間違いなくマグミットと伝えられた可能性の方がでかそうだが…

 

もっとも、甲状腺ホルモンはかなり微量(単位を見ても分かるが、1回量がおよそ0.05mg~0.1mgなのである)なので、ちょっとしたキレート物にかなり影響を受けてしまうことを考えたら、マグミットの飲み方が変わったところでそんなにQOLに影響与えないから、そっちの方がいいのかなあ。

 

 

ともあれ、この患者さんは特に併用注意の医薬品が無かったので良かったが、

甲状腺摘出後で一生T4製剤を飲まなくてはいけない患者には、きわめて併用薬のチェックは重要なのだ。

 

もし、キレート作用で効果が出なくなったら代謝に関する機能の大部分が奪われるし、

 

それで医師が用量を増やしてしまったら…

 

キレート医薬品を飲まないタイミングで急に血中濃度が上昇し。

 

不整脈。からの続発性疾患

 

に繋がることまで考えないといけない。

 

 

もっとも、透析患者でガンガンチラーヂンと毎食後の沈降炭酸カルシウムを併用している患者なんてたくさんいるから、

 

そこまで深刻なケースはあまりないのだろうけどね。

 

でも透析患者のレボチロキシン投与量を見る限り、やっぱり100μgを大きく超える用量を服用している患者が多いので、

 

多少なりともキレートしてんのかなあ、ってね

 

 

 

あとどうでもいいけど

 

認定薬剤師の単位を取り終えて

 

来月には認定薬剤師の申請ができるようになった

 

かかりつけ薬剤師の算定には実務経験3年が必要なので

 

まだまだ点数が取れるわけじゃないんだけど

 

他のチェーンとかみると、地味にかかりつけ薬剤師の点数をボンボン取っている所はあるらしい。

 

まあ、1割負担の患者なら1回70円だし

 

さっきも言ったように多剤併用でのリスクマネージメントが出来る意味では

使い勝手はあんのかなーって気はするね

 

 

まあ俺は少なくとも老人になるまでは使わねー気がするが。

210円取られるくらいならその金で酒を買う…

 

つーか自分でできるからいらねーw