【薬】透析治療の処方①
よう俺だ。
最近は忙しすぎて連休でも無いと書けなくなってきた…。
前回言っていた通り、透析の薬理学的アクセスのさわりだけでもまとめようと思う。
まず、前提条件として、透析はその原疾患があることが多い。
全部ではないが、糖尿病や高血圧、慢性糸球体腎炎なんかがそうだ。
だから、多くの透析患者はその治療も平行して行っていかないといけない。
そして、その治療薬と、透析との相性・腎機能との相性も随時確認していかねばならないから…
非常に薬学的にも負担の高い疾患だ。
その中でも特に使用率の高い薬剤について今回は書く。
・糖尿病治療薬
透析患者の中で、血糖降下薬を服用している患者はかなり多い。
その状況も多岐に渡り、
インスリンを複数本大量に打っている人も居れば、
DPP4阻害薬単剤な人も居る。
ただし、血糖降下薬はその多くが腎排泄であるため、
使われる種類は実はそんなに多くない。
αGI…アカルボースやミグリトールなど
即効型インスリン促進薬…レパグリニドなど
DPP4阻害…~グリプチン
(余談だが、リナグリプチンとテネリグリプチンは、腎機能低下による減量の必要がない。)
基本はこの3剤。
最近は、SGLT2が臨床での実績を積んできたため、レジメンに加わってくるかもしれない。
エンパグリフロリジン(ジャディアンス)は、腎機能の低下に抑制効果が働く論文が最近出てきたので、うちの透析科からもそろそろ使われるかも?
・高血圧治療薬
こちらも糖尿病薬と肩を並べて登場する機会が多い。
利尿薬(トリクロルメチアジドやフロセミド)も多い。
透析患者は自然とカリウムが高くなっていく傾向があるので、
低Kへ誘導する利尿薬はその狙いもあるようだ。
逆に、K保持性の利尿薬はあまり出てこない。
β遮断薬の使用率は低め。いずれにせよ基本は腎保護作用のあるARB、ACEが代表的だ
・リン吸着薬
透析患者のすべてが飲んでいるわけではないが、腎不全患者以外が服用することの少ないもの。症状が重くなるにつれ、お世話になることが多い。
基本は、食物の中のリンと胃の中で合体して、吸収されずに体外へ排泄する。
そのため、食直後(一部は食直前)服用が徹底されないと、意味が無かったりする。
吸着薬にも色々あるが、
沈降炭酸カルシウム
ランタン(ホスレノール)
クエン酸第二鉄(リオナ)
が特によくうちでは使われる。
沈降炭酸カルシウムはカルシウムを含むため、
リンが高くなりPTH亢進、二次性の低カルシウム血症を起こしやすい透析患者とは相性が良い。
ただし、慢性投与でカルシウムが高くなり、血管の石灰化を招きやすくなるところも注意点。
リオナは三価鉄を含む。吸収がよくないので鉄剤ほど鉄としての効果は出ないが一応鉄が高くなるリスクはあるらしい。
また、便が鉄で黒くなる。
・カルシウム、ビタミンD補給剤
前述のように、末期腎不全患者はカルシウムが低下しやすくなっているので、ビタミンDを補給することでカルシウムの生成を優位に働かせる。
アルファカルシドール内服
それから院内で注射薬としても出されている
要は骨がもろくなるわけだが、ビスホスホネート製剤は腎排泄のためそれ以外の薬で対処していくことになる。
(・造血)
院外薬局で出ることはないが、腎機能が悪くなるとエリスロポエチンが低下して腎性貧血を起こすことがある。
故に、エポエチンの注射が院内で出ることがある。
・血栓防止薬
透析では、血液を一度体外に出して、機械を通してまた戻す。
ただ、血中の血小板や凝固因子は生きているので、機械に触れたこれらの因子は凝固を起こすため、患者の血管イベントが増加する原因になる。
注射で、院内からヘパリン製剤が出るのだが、それだけでは足りないので、内服で抗血小板薬が出されることが多い。
ワーファリンやシロスタゾール、クロピドグレルが代表的だが、昨今、第Xa因子阻害薬の登場により急速にそのシェアは伸びている。
高齢の患者が手術をする際に何日間も中止しなければいけないのは、隔日で透析をする患者には不適だし、ワーファリンはPT-INRで容量調整する必要があるからだ。
アビキサバン、リバーロキサバンがうちでは多い。
・抗ヒスタミン、レミッチ
透析患者はかゆみを訴えることが非常に多い。もともと、通常の成人と比べて皮膚症状が多くなったり、透析の影響で血管掻痒が増えるため、透析年数の多い患者ほど慢性的に抗ヒスタミン薬を飲んでいる。
なお、レミッチ(ナルフラフィン)はヒスタミンと違い、オピオイドK受容体を遮断することによってかゆみ感覚を抑制する。透析におけるかゆみ専用のような薬である。
・昇圧薬
アメジニウム
ドロキシドパ(ドプス)など
透析時には、血液を一時的に引くため、体にとっては失血するということだ。
故に、血圧が下がる。低血圧を防ぐため、透析前および透析後に内服する。
・シナカルセト(レグパラ)
上の方でも書いた、副甲状腺機能亢進症に対する薬。
・便秘治療薬
マグミット、センノシド、アローゼン顆粒、大建中湯など…
単純に高齢の患者が多いからだろうが、便秘気味の患者が多いので、見る機会も多い。
・抗不安、睡眠薬
一般の外来患者と比べると処方率は高い。
あまり腎機能を考慮しなくても良い薬が多いせいか割と種類を選ばず出る。
・その他漢方
芍薬甘草湯…脚がよくつるらしく、透析の中では汎用処方。
こんなところだろうか…
同じ患者でも、多剤併用の多さといい、種類といい、一線を画している。
薬剤師によっては全くかかわらない分野になるかもしれないけど、分野としては決してニッチではない時代に突入してきていることだし。
腎機能の在り方も含めて勉強する意味合いは強いのではなかろうか。