ごちゃまぜ浮浪録

新人を脱しつつある肥満薬剤師が薬学部生向けに日頃のあれこれを偉そうに語るブログ

肝性脳症の新薬リフキシマ

新年が気付けば明けてしまった。

 

 

さすがにこんな更新ペースではマズいと思うのだが…

 

今の所、フルで勤務を回っている関係で休みが体を休める日になってしまって

休日の勉強もはかどらない……。

 

ともあれ、仕事中にネタを見つけたので、薬剤師国家試験も間近に迫っていることだし、久々の記事は新薬の記事だ。

 

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201612/549324.html

 

薬剤師国家試験の勉強をしている時に、結構な頻度で過去問に目にしたと記憶しているのだが、

 

高度肝障害(主にアルコール性慢性脂肪肝や肝硬変。一部、慢性肝炎)→高アンモニア血症→肝性脳症

 

という繋がりは頭の中でイメージできるだろうか。

 

肝障害が高度あるいは慢性に進行した例では肝機能が低下しており、

特に肝臓の主たる仕事である体内で生成した毒物の解毒機能が顕著に悪くなる。

 

その一例がアンモニアであり、長期に肝硬変を患う患者は往々にして高アンモニア血症を発症する。

 

そして、肝硬変での治療薬の代表として、

・BCAA製剤(バリン・ロイシンイソロイシン)……リーバクト、アミノレバン等

→肝性脳症を引き起こす患者は、これらBCAAが低下している(フィッシャー比)。これらは肝臓ではなく筋肉でも代謝できるため、増悪期の精神症状等を改善するためにもつかわれる。

・ラクツロース

腸内で乳酸菌を増やし、腸内のウレアーゼ活性でアンモニアが増加するのを抑制する。

・カナマイシン

腸管からほとんど吸収されない抗生物質(アミノグリコシド)。

上記の腸内細菌を殺菌することで、アンモニアの増加を抑制する。

副作用として、腸内細菌叢が乱れ偽膜性大腸炎を引き起こす。(腸管で吸収されにくい感染性腸炎治療抗生剤は、どうしても付きまとう副作用である)

※ただし、カナマイシンには肝性脳症の適応は無い。適応としては、感染性腸炎である

 

これらが挙げられる。

マークシート型の国家試験では特に出題しやすいので、必ず取りこぼしが無いようにしておきたい所だ。

 

このカナマイシンに似た作用機序で、リフキシマは肝性脳症の適応で発売された。一般名はリファキシミンで、系統としてはリファンピシンと似ているDNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬である。

 

リフキシマのメリットは、肝性脳症に悩む肝硬変患者(ちなみに、肝硬変では肝性脳症の比率は4割以上に上り、非常に予後が悪い)に対する新しいアクセス方法だということ。

 

これは国家試験には全然関係のないことなのだが、上記のラクツロースやアミノレバンといったものは、通常の栄養に置き換えて使用するものなので、とにかく量が多い。

この間の記事で言った、カリウム吸着薬のカリメートも大概なのだが(1包5グラム。それを毎食毎日)、アミノレバンは1回50gである。それを180mlの水に溶かして毎日毎食飲まなくてはいけない。

ラクツロースは1回30~60mlほど(ゼリー剤ならアーガメイトゼリー並の大きさ)だ。

一般的な製剤と比べると量が多く、治癒しない限り一生飲むものだから、嫌になるのもしかたがない。

 

あと、アミノレバンはくっそマズイ。

薬局実習でもし試食させてもらえるなら是非飲んでほしい。

3日でギブアップしたくなるぞ。

 

これに加えて、併発する疾患が肝硬変には多いから、とにかく大量の服用をしなくてはいけない精神的苦痛から、コンプライアンスが悪化しやすい疾患だ。

 

そんなんだから、服薬しなくなる患者が多く、見かねたうちの医師もついこの間でたばかりの新薬に頼っていきなり処方してきたというわけだ。

(ちなみにコレ、いま規制品らしく、メーカーが処方元に確認して契約を結ばなければ納品できないみたいだ。)

 

こういう肝硬変患者のコンプライアンスを改善できるのでは…と思っている。

 

デメリットは、結核菌への交差耐性が問題視されているということ。

要は、結核治療薬であるリファンピシンと同様の機序であるので、リファンピシンに対する耐性菌を増加させてしまうのでは、という懸念からだ。

 

というのもあって、添付文書では禁忌ではないものの結核患者には第一選択とせず、他の療法を優先すること、となっている。

 

リフキシマについて抑えるべき点はこんな所だろうか?

 

昨年の新薬なので、国家試験で出るにしても2018年か2019年以降だと思うが

今4年生なら、チェックしておいても良い所かな

 

 

ところで、今年のホットな部分だが

 

1瓶130万、一人の患者の治療3か月に400万のお薬ハーボニー配合

(新薬のC型肝炎治療薬レジパスビル・ソホスブビルの合剤。ソホスブビルはNS5Bポリメラーゼ阻害で、日本人のC型肝炎に特に著効率が高いらしい新成分)

 

のニセモノが出回ってるらしいな。

B/C型肝炎治療関連の問題は今まで併用薬関連と禁忌くらいしか出しどころが無かったし、

そろそろ狙われる可能性もあるんじゃないかな~と

 

思ってる。今年は無いかもしれんが、来年の国家試験はちょっとあるかも。アスナプレビルなんかもあるしな。

 

 

 尤も受験生はこの時期こんなブログなんて開いてないとは思うが

 

 

どうでもいいことだけれど

調剤薬剤師になって、

物理化学衛生分野に関しては

 

本当に知識使わないんだよな。マジで

基礎部分だから仕方ないとはいえ

なんであんなに物理化学って青本もブ厚くてそこそこ出題範囲あるんだろうな…

第99回、第100回に至っては

アレの足切りで涙した人も居るだろうに

 

逆に

薬理 薬物動態は

使えないとお話にならないレベル

 

ってくらいに毎日割と使う

当たり前ちゃ当たり前だが

 

患者の前でニコニコ笑って袋詰めする

なんてコンビニ店員でもできるわけで

 

それをやりつつも頭の中で電子カルテ見ながら患者の動向を推察する

んで、必要そうな知識を使っていく…

 

 

知識が無くても仕事にはなるのかもしれないが

あって得することは多いと思う。

 

例えばさ、

血圧と糖尿病の薬をずっと28日とかで同じ薬処方されてた患者がいきなり

全処方を14日分、ただしメトグルコ(メトホルミン-ビグアナイド薬)錠だけ11日分で処方されてて

 

普通、処方せんで日数が違うのはいくつか理由があって

①単に医師の処方ミス。電子オーダリングで、前回の日数をそのまま引っ張ってくると時々ミスる。

残薬調整。患者がこの薬だけ●日分余ってる、と医師に伝えてその分減らしてるパターン。

等色々あったりするんだけど

まぁ疑義照会するか、患者に聞いて解決するのであれば良いが

 

この時処方せん持ってきてたのが患者の妻で、代理だったから何も聞いてなかったんだよね。奥さんは

 

で、何も知識が無いと、看護師かクラークに電話して日数ミスってますよ~って依頼しちゃう可能性があるわけだけど

 

よくよく尋ねたら、2週間後にCTを受けるとのことだった。

 

ああ、あれか、とそれでピンときた。

メトグルコは重大な副作用に乳酸アシドーシスがあるんだが

これを起こしやすくする要因に腎機能低下があるんだな。

だから透析患者や末期腎不全では当然禁忌なんだけど

 

CTなんかに使うヨード系の造影剤は、一時的に腎機能を低下させることがある。

特に、こういうCTを受ける患者は元々腎機能が低下しつつある高齢者が割と多いから

結構気を使わないといけない。

 

それで、CTの前後、メトグルコだけを中止する意図が医師にあったわけだ

実際に服薬指導する時にも、CTの2日前から中止し、CT後48時間は服用を避けるのが望ましい。

とされている。

 

 

こういう所に大学で勉強した事が生きてくるなら

 

まああながちしんどい思いして勉強したことも悪くなかったと思うようになってきた(最近)

 

あと単純に雑学的にでも色々知ってると

患者と話が弾むし良い。

話が弾まないつまらない薬剤師に

 

自分の内情なんて話してくんないだろうからな~

 

俺なら

薬の説明と袋詰めしかしてくれない奴より

多少なりとも聞いてくれる奴の方がいいな

 

 

さういふものに わたしはなりたい